WFPチャリティー エッセイコンテスト2025

入賞作品発表

最優秀賞

寄り添うかたち
栃木県 宇都宮大学共同教育学部附属中学校 2年
関 桃羽 さん

  「はい、どうぞ。」
  紙袋を受け取った女の子はうつむいた。
 「どうしたの?」とのぞきこんだ私を避けるように、涙をうかべて走り去ってしまった。
それは、夏休みに入ってすぐの日曜日。私はフードバンクの食品配布会にボランティアとして参加していた。子育て世帯を対象とした会場は大盛況で、食品を詰めた紙袋は次々と手渡され、笑顔とともに消えていった。眠る赤ちゃんを背負って帰るお母さん、僕の仕事と言わんばかりに紙袋を両手で抱え歩く少年―いろんな背中を見送りながら、私は心の中で「お腹いっぱい食べてね。」とつぶやいた。
 満足感と疲労感、今日一日を表す言葉にぴったりだ。けれど、涙をうかべたあの女の子の表情が、帰宅後も私の胸に残り続けた。
 数日後、フードバンクに一通の手紙が届いた。
 「先日はありがとうございました。私の家は母子家庭で弟が三人います。経済的に厳しく、食品配布会に深く感謝しています。でも、あの時は、同じぐらいの年頃の子から食料を受けとる自分が恥ずかしくなって、あんな態度をとってしまいました。突然驚かせてしまってごめんなさい。」
 その手紙を読み、私ははっとした。食べ物に困っている人を助ける、という私の認識の甘さに気づかされたのだ。単に食べ物を配って喜んでもらう活動ではない。感謝の言葉の裏に、支援を受けることへの葛藤や痛みが潜んでいる。自分の弱さをさらけ出すことの恐怖に、寄り添うことが必要なのだと感じた。
 「助ける」よりも「寄り添う」こと。支援とは「誰かを引っぱる」ことではなく、「隣で一緒に歩く」こと。そんな支援者に、私はなりたい。
 そうだ、手紙の返事を書こう。あの子の好きな食べ物はなんだろう。私は卵焼きだよ。甘くて、やさしい味がするから。

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  • 【選者のコメント】
    堀 潤さん(ジャーナリスト 元NHKアナウンサー)
    あなたの作品は、「誰かを助けたい」という気持ちの裏にある、一方的な思いや行動が、時に相手を傷つけてしまうことがあるという、人と人との関わりの難しさを、丁寧に描き出していました。
    涙を見つめ、戸惑い、考え抜いたその経験の中に、「支援」とは何かを自らの心で問い直す誠実さがありました。
    あなたの気づきは、助けることよりも「寄り添うこと」の尊さを教えてくれます。
    この作品には、人へのまなざしの深さと、社会を見つめる想像力が息づいています。
    どうかこれからも、そのやさしさと洞察力を大切に、あなたの言葉で世界を照らしていってください。
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