WFPチャリティー エッセイコンテスト2022

入賞作品発表

審査員特別賞(中学生・高校生部門)

じいじの守ったお寿司
神奈川県 Stone Ridge School of the Sacred Heart 高校3年
小林 真緒さん

 「じいじが帰ってこない。」
 寒い12月のある日、一時帰国した私は祖父とお昼ご飯を家で一緒に食べる約束をしていた。私が買いに行くと言ったものの「いや」と祖父が強く言い張り、大好物のお寿司を祖父が二人分買ってきてくれることになっていた。しばらくの間、私は祖父の姿を窓から探しながら今か今かと首を長くして待つが、祖父は一向に現れない。
 不安になって家を飛び出た。スーパーまでの道を走って辿り、必死で探しまわると、道端に蹲って座る祖父がいた。呂律が回らず、立ち上がれない。でも、お腹にはスーパーの袋を大事そうに抱えていた。慌てて救急車を呼びお医者さんに診てもらったところ、幸い健康には特に異常はなかったようだ。
後で話を聞くと、久しぶりの二人の昼食が楽しみで、お寿司を美味しく食べられるように朝ご飯を食べずお腹を減らして家を出たんだと悔しそうにいう。その結果、スーパーまでの道のりを歩いている途中、冷気で血糖値が下がり動けなくなってしまったらしい。足腰がかなり悪くなり、歩くペースもすっかり落ちていたが、「美味しい」を共有するために笑みを浮かべて一歩ずつゆっくり足を進める姿は容易に想像ができた。そんなヤンチャで少し子供みたいな祖父が微笑ましく、なんとかして孫にお寿司を届けたいという思いに胸がジンとした。幼い頃、お寿司で口がいっぱいの私を見て、戦時中に空腹を経験した祖父が「まおちゃん、君はこれからも必ず美味しいものを食べるんだぞ。食べ物はどんな時も人を笑顔にしてくれるんだからな」とよく笑っていたことを思い出す。「もう、じいじ何やってるの?」とふざけて言ってみたが、気づくと目には涙が溜まっていた。
 最近は祖父とあまり会えていない。でも、自身が料理し、人に食べ物を届ける側になった今、祖父が守ろうとしたものを私も守っている。次に会ったときには祖父に食べてもらおう。じいじの笑顔、見られるかな。

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  • 【選者のコメント】
    芸人 おいでやすこがさん
     人の思いは言葉以外にも隠れていますよね。おじいちゃんの深い愛情が、お寿司とスーパーの袋をお腹に大事に抱えていた事実からひしひしと伝わります。ごはんは、誰にとっても喜んでもらいたいという気持ちや期待が詰まっているものだと思います。小学生の時、僕が遊びに行く時に、決まって遠くのスーパーまで沢山の種類のアイスを買いに行ってくれた祖母を思い出しました。何より、おじいちゃんの思いを汲み取れた真緒さんに拍手を送りたいです。
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