WFPエッセイコンテスト2015 入賞作品

審査員特別賞(中学生・高校生部門) 忘れられない一人でのごはん
兵庫県 クラーク記念国際高等学校芦屋キャンパス 1年 岩﨑 広暉(いわさき ひろき)さん
 一年半程前の話です。僕は中学受験をして、関西の中でも上位の進学校へ通っていました。その学校は、中一の間に中学数学を終わらせ中二からは数Ⅰ・Aをしていくぐらい、勉強の進むスピードが速い学校でしたが、勉強自体は追いつけてやれていました。しかし部活でのストレス、日々の人との関わり、周りの人からの期待などに耐えられず、不登校になりました。そして中三に入る前の冬、家族でごはんを食べ出す前に思いきって切り出しました。
 「俺、今の学校やめて普通の市立に籍移して、フリースクールに通おうと思う。」
 その時の家族の反応を忘れる事が出来ません。父は自分がどんな思いで通わせていたかを怒りながら話し、母はもうこの子の人生どうしようと泣きながら言い、兄はもうお前終わったな、という言葉を吐き捨てました。そして父にこう言われました。
 「お前の顔を見て食事をしたくない。部屋に戻れ。」
 僕は素直に部屋へ戻りましたが、何より家族の反応に失望しました。進学校に通っている、頭の良い息子・弟でないと僕に意味を見出せなかったのです。その日の深夜、家族が寝静まった後一人でごはんを食べました。泣くわけでもなくただ呆然としながら。そして僕はその時決めたのです。勉強も彼らと同等の実力を持ちながら、彼らとは違い勉強や頭の良さだけでなく広い視野を持ちながら人の良さなどを見れる人間になる事を。僕は今彼らとはあまり会話もしないしごはんを一緒に食べることもほぼないです。しかし、その度にあの日とあの日のごはんを思い出します。そしてさらに決心を固くするのです。彼らと自分は違うのだと、そして僕は自分らしく生きていくのだと。