WFPチャリティーエッセイコンテスト2018

入賞作品発表

中学生・高校生部門賞

お弁当からのエール
東京都 連雀学園三鷹市立第一中学校 2年
 日置 七瀬(ひおき ななせ)さん

 私の親は共働きで母は夜遅くに帰ってくる。毎日夜遅くにくたびれて帰ってくる母の身を私は心配していた。
 去年の夏休み。中学に入ってから初めての夏休みであったが、毎日の部活の一日練習ですっかり気が参ってしまった。私はテニス部なので汗だくになりながらも懸命に部活にとりくんだ。そんな私の唯一の励みになったのがお弁当だった。「おなかすいた。今日のお弁当なんだろう。」そう言ってふたを開ける。中身は冷凍食品ばかりだった。「やっぱり、今日も冷凍食品か。」とつぶやき、まわりの子のお弁当を見た。どのお弁当も彩りがあって美味しそうで自分のものと見比べると悲しくなった。その日はおなかが空いていたにも関わらずほとんど残してしまった。
 その日の夜、私は読書に夢中になり遅くまで起きていた。ようやく寝ようとしたとき、母が帰ってきた。母は帰ってきて早々にお弁当袋を開け、中身を見た。母は私に「なんで残したの。」と聞いてきた。私は「冷凍食品が嫌になったから。」と答えた。すると母は悲しい顔をして、「そう。」と言った。
 次の日も部活だった。お昼の時間になり、あまり期待せずにお弁当箱のふたを開けた。私はとても驚いた。いつもは冷凍食品であふれていたお弁当箱の中に私の好きな玉子やきやウィンナーなどがたくさん入っていた。私はおそるおそる玉子やきを口にした。ほんのり甘くて母の味がした。私は美味しい、美味しいと言って食べた。母が早起きしてこのお弁当をつくってくれたと思うと目が涙ぐんだ。
 その日、私は母の帰りを待った。昨日より遅く帰ってきた母の手には明日のお弁当の材量が入ったレジ袋がさがっていた。私は母に近寄って「冷凍食品でもいいよ。」と言った。すると母は何度もごめんねと言っていた。
 次の日からお弁当は冷凍食品に戻った。だけど食べると元気がでた。お弁当から「ファイト」とエールをもらった気がした。

  • 【選者のコメント】
    三國 清三さん(国連WFP協会顧問 オテル・ドゥ・ミクニ オーナーシェフ)
     たしかに、冷凍食品は作り置きだ。しかし、そこに母親の愛情、温もりがあれば、十分美味しいと思える。手作りにこしたことはないが、思いが伝われば良い。今の冷凍食品はレベルが高く、栄養や見た目、味、熟成と完璧である。冷凍食品のことをもう少し勉強したら、お母さんの大変さと、思いで作ってくれるだけ感謝すると思う。彼女に寝る時間も惜しんで作ってくれた冷凍弁当は、世界一の味と感じたと思う(その気持ちが)。食べられるだけまし、世界では、それすら食べられない子どもがたくさんいるのだから。上を見てもきりがないし、下を見てもきりがない(笑)
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